I. 誕生の記録(福音書の証言)
マタイによる福音書(1-2章)
ヨセフの視点から
系図(1:1-17)
- アブラハムからダビデを経てイエスまで
- 「アブラハムの子、ダビデの子、イエス・キリストの系図」
- メシアとしての正統性を証明
処女降誕(1:18-25)
18-19節: マリアの妊娠
- 聖霊によって身ごもった
- ヨセフは正しい人で、ひそかに離縁しようとした
20-21節: 天使の告知(ヨセフへ)
「恐れず妻マリアを迎え入れなさい。マリアの胎の子は聖霊によって宿ったのである。マリアは男の子を産む。その子をイエスと名付けなさい。この子は自分の民を罪から救うからである」
22-23節: 預言の成就
「見よ、おとめが身ごもって男の子を産む。その名はインマヌエルと呼ばれる」(イザヤ7:14の引用)
- インマヌエル = 「神は我々と共におられる」
名前の意味
- イエス(ヘブライ語:ヨシュア、יֵשׁוּעַ)= 「主は救い」
- キリスト(ギリシャ語:クリストス)= 「メシア」「油注がれた者」
東方の博士たち(2:1-12)
1-2節: 博士たちの訪問
- ヘロデ王の時代、ベツレヘムで誕生
- 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか」
- 星に導かれて来た
11節: 礼拝と贈り物
- 黄金 – 王権の象徴
- 乳香 – 神性の象徴(神殿礼拝で使用)
- 没薬 – 死と埋葬の象徴(イエスの受難の予兆)
エジプトへの逃避(2:13-15)
- ヘロデの幼児虐殺を逃れる
- 預言の成就:「エジプトから、わたしは息子を呼び出した」(ホセア11:1)
ベツレヘムの幼児虐殺(2:16-18)
- ヘロデの残虐行為
- エレミヤの預言の成就(エレミヤ31:15)
ナザレへの帰還(2:19-23)
- 「ナザレの人と呼ばれる」という預言の成就
ルカによる福音書(1-2章)
マリアの視点から、より詳細な記述
受胎告知(1:26-38)
26-27節: 天使ガブリエルの訪問
- ナザレという町
- ダビデ家のヨセフのいいなずけマリアのもとへ
28節: 挨拶
「おめでとう、恵まれた方。主があなたとともにおらます」
30-33節: 告知
「恐れることはありません、マリア。あなたは神から恵みを受けたのです。あなたは身ごもって男の子を産むが、その子をイエスと名付けなさい。その子は偉大な人になり、いと高き方の子と言われる。神である主は、彼に父ダビデの王座をくださる」
34節: マリアの質問
「どうして、そのようなことがありえましょうか。わたしは男の人を知りませんのに」
35節: 天使の答え
「聖霊があなたに降り、いと高き方の力があなたを包む。だから、生まれる子は聖なる者、神の子と呼ばれる」
38節: マリアの従順
「わたしは主のはしためです。お言葉どおり、この身に成りますように」
マリアのエリサベト訪問(1:39-56)
41-45節: エリサベトの預言
「あなたは女の中で祝福された方です。胎内のお子さまも祝福されています」
46-55節: マリアの賛歌(マグニフィカト)
「わたしの魂は主をあがめ、わたしの霊は救い主である神を喜びたたえます」
イエスの誕生(2:1-7)
1-3節: 歴史的背景
- 皇帝アウグストゥスの勅令
- 住民登録のため、ヨセフとマリアはベツレヘムへ
4-5節: ベツレヘムへの旅
- ヨセフはダビデの家系
- 身重のマリアを連れて
6-7節: 誕生
「ついに月が満ちて、初めての子を産み、布にくるんで飼い葉桶に寝かせた。宿屋には彼らの泊まる場所がなかったからである」
重要な点
- ベツレヘム – ダビデの町、メシア誕生の預言の地(ミカ5:2)
- 飼い葉桶 – 謙遜さ、へりくだり
- 宿屋に場所がなかった – この世は神の子を受け入れる余地がなかった(ヨハネ1:11)
羊飼いたちへの告知(2:8-20)
8節: 野宿する羊飼いたち
- 社会の底辺の人々
- しかし最初の証人となる
9-12節: 天使の告知
「恐れるな。わたしは、民全体に与えられる大きな喜びを告げる。今日ダビデの町で、あなたがたのために救い主がお生まれになった。この方こそ主メシアである。あなたがたは、布にくるまって飼い葉桶の中に寝ている乳飲み子を見つけるであろう。これがあなたがたへのしるしである」
13-14節: 天の軍勢の賛美
「いと高きところには栄光、神にあれ、地には平和、御心に適う人にあれ」
15-20節: 羊飼いたちの訪問と証言
- 急いで行って確かめた
- 見聞きしたことを知らせた
- マリアは「これらのことをすべて心に納めて、思い巡らしていた」
割礼と奉献(2:21-38)
21節: 8日目の割礼
- 「イエス」と名付けられる
22-24節: 神殿での奉献
- 律法に従った清めの儀式
- 貧しい人の捧げ物:山鳩二羽(レビ12:8)
25-35節: シメオンの預言
29-32節: シメオンの賛歌(ヌンク・ディミティス)
「主よ、今こそあなたは、お言葉どおり、この僕を安らかに去らせてくださいます。わたしはこの目であなたの救いを見たからです。これは万民のために整えてくださった救いで、異邦人を照らす啓示の光、あなたの民イスラエルの誉れです」
34-35節: マリアへの預言
「御覧なさい。この子は、イスラエルの多くの人を倒したり立ち上がらせたりするためにと定められ、また、反対を受けるしるしとして定められています。——あなた自身も剣で心を刺し貫かれます——」
36-38節: 女預言者アンナ
- 84歳の寡婦
- 神殿で断食と祈りに専念
- イエスについて語り始めた
II. 誕生の時期
いつ生まれたのか?
歴史的手がかり
- ヘロデ大王の治世中(マタイ2:1)
- ヘロデは紀元前4年に死去
- したがってイエスは紀元前4年以前の誕生
- 住民登録(ルカ2:1-2)
- キリニウスがシリア総督の時
- 歴史的に複雑な問題
- 一般的推定
- 紀元前6-4年頃が最も可能性が高い
12月25日ではない?
聖書的証拠
- 羊飼いたちが野宿していた(ルカ2:8)
- イスラエルの冬(12月)は寒く雨季
- 春か秋の可能性が高い
12月25日の起源
- 4世紀以降にキリスト教会が採用
- もともとローマの冬至の祭り(太陽神の誕生日)
- キリスト教化された日付
- 正確な日付より、誕生の事実と意味が重要
III. 誕生の神学的意味
1. 受肉(インカーネーション)
ヨハネ1:14
「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた」
意味
- 神が人となられた
- 神性と人性の完全な結合
- 目に見えない神が、目に見える形で現れた(コロサイ1:15)
ピリピ2:6-8
「キリストは、神の身分でありながら、神と等しい者であることに固執しようとは思わず、かえって自分を無にして、僕の身分になり、人間と同じ者になられました。人間の姿で現れ、へりくだって、死に至るまで、それも十字架の死に至るまで従順でした」
2. 処女降誕の重要性
なぜ処女から生まれる必要があったのか?
神学的理由
- 原罪の継承を断つ – 人間の父を通さない誕生
- 神の子としての独自性 – 通常の生殖ではない、神の直接的介入
- 預言の成就 – イザヤ7:14「おとめが身ごもって男の子を産む」
歴史的論争
- 自由主義神学は処女降誕を否定
- しかし、初代教会から一貫して信じられてきた
- 使徒信条:「聖霊によりてやどり、おとめマリヤより生まれ」
3. ベツレヘムでの誕生
預言の成就
ミカ5:2
「ベツレヘム・エフラタよ、お前はユダの氏族の中でいと小さき者。お前の中から、わたしのためにイスラエルを治める者が出る。彼の出生は古く、永遠の昔にさかのぼる」
ダビデとの関連
- ダビデもベツレヘム出身
- メシアは「ダビデの子」
- 王としての資格
4. 飼い葉桶の象徴
謙遜と低さ
- 王の宮殿ではなく、家畜小屋で
- 金の揺りかごではなく、飼い葉桶に
- IIコリント8:9「主は豊かであったのに、あなたがたのために貧しくなられた」
アクセシビリティ
- 最初の訪問者は羊飼い(社会の底辺)
- すべての人に開かれた救い
- ルカ2:10「民全体に与えられる大きな喜び」
5. 神の救済計画の成就
創世記3:15の実現
「女の子孫が、蛇の頭を砕く」
- 原福音(プロト・エヴァンゲリウム)
- 女(マリア)から生まれる救い主
ガラテヤ4:4-5
「時が満ちると、神は、その御子を女から、しかも律法の下に生まれた者としてお遣わしになりました。それは、律法の支配下にある者を贖い出して、わたしたちを神の子となさるためでした」
「時が満ちる」
- 政治的 – ローマの平和(パクス・ロマーナ)、旅行の安全
- 言語的 – コイネー・ギリシャ語が共通語
- 宗教的 – メシア待望の高まり
- 霊的 – 人類の限界、救い主の必要性の認識
IV. 誕生物語の対比と意味
アダムとイエスの対比
| 第一のアダム | 第二のアダム(キリスト) |
|---|---|
| エデンの園で創造 | ベツレヘムで誕生 |
| 不従順により死をもたらした | 従順によりいのちをもたらした |
| 罪の始まり | 救いの始まり |
ローマ5:19
「一人の人の不従順によって多くの人が罪人とされたように、一人の従順によって多くの人が正しい者とされるのです」
モーセとイエスの対比
| モーセ | イエス |
|---|---|
| エジプトの幼児虐殺から救われた | ヘロデの幼児虐殺から救われた |
| エジプトに逃れた | エジプトに逃れた |
| イスラエルの解放者 | 全人類の救い主 |
| 律法を与えた | 律法を成就した |
ダビデとイエスの対比
| ダビデ | イエス |
|---|---|
| ベツレヘム出身 | ベツレヘムで誕生 |
| 羊飼い | 良い羊飼い |
| イスラエルの王 | 全世界の王 |
| 一時的王国 | 永遠の王国 |
V. クリスマスの現代的意義
1. 神の愛の現れ
ヨハネ3:16
「神は、その独り子をお与えになったほどに、世を愛された」
- クリスマスは神の愛の究極的表現
- 神が人間のレベルまで降りてこられた
2. 希望のメッセージ
ルカ2:10
「民全体に与えられる大きな喜び」
- どんな暗闇の中にも、光が来た
- 絶望の中に希望が生まれた
- イザヤ9:2「闇の中を歩む民は、大いなる光を見た」
3. 謙遜の模範
- 神の子が飼い葉桶に
- 権力者ではなく、羊飼いたちに最初に知らされた
- ピリピ2章の「キリストの賛歌」
4. すべての人への招き
- 東方の博士(異邦人)も招かれた
- 羊飼い(貧しい者)も招かれた
- マタイ11:28「疲れた者、重荷を負う者は、だれでもわたしのもとに来なさい」
5. 受肉の継続
教会はキリストの体
- 私たちを通してキリストが今も世に現れる
- ガラテヤ2:20「生きているのは、もはや私ではありません。キリストが私のうちに生きておられるのです」
- マタイ25:40「わたしの兄弟であるこの最も小さい者の一人にしたのは、わたしにしてくれたことなのである」
VI. まとめ:福音の核心
イエス・キリストの誕生は:
- 神が人となられた – 受肉
- 預言が成就した – 約束の実現
- 救いが始まった – 十字架と復活への道
- 希望が与えられた – すべての人への良い知らせ
- 神の愛が示された – 「インマヌエル=神は我々と共におられる」
ヨハネ1:14
「言は肉となって、わたしたちの間に宿られた。わたしたちはその栄光を見た。それは父の独り子としての栄光であって、恵みと真理とに満ちていた」
クリスマスの真の意味
- プレゼント交換や飾り付けを超えて
- 神の最高の贈り物 – イエス・キリスト
- 私たちの応答:信仰による受け入れ



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